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開くことの可能性―JOU「体験道場」に参加して

岡本拓|BALインターン(エディター)


荒川修作設計の三鷹天命反転住宅で行われたイベント「三鷹天命反転住宅…つづく。」の一環である、JOUのワークショップ/パフォーマンス「体験道場」へ参加した。注1
当日(5月19日)は荒川の命日、とても多くの人で賑わっており、ダンス関係者以外にも建築やデザイナーの方ともお会いすることができた。荒川の建築を管理している団体の方のお話を聞くこともでき、建築の工程や、この住宅の建設の経緯等を伺った。
荒川修作の建築は独特の形態でよく知られており、三鷹天命反転住宅も例外ではない。基本的にはキッチン・リビングルームを中心とし、その周りに4つの部屋が配置されている。しかし、用途は集合住宅でありながら、簡易的な間仕切りがあるものの、基本的にワンルームである。そして、空間の色彩は原色である上に、補色同士で配置されているために、慣れるのに時間を要する。また、曲面が多用されている等、この建築における特殊な要素をいくつかあげることができる。注2

ワークショップ(WS)は、30分間会場内のキッチン・ダイニングルームを中心に行われた。あらかじめ講師から、部屋に何台かのカメラが取り付けられていること、このカメラに向けて体を動かして欲しいことを告げられる。カメラに映った映像はリアルタイムに会場内のテレビに映しだされ、参加者はそれを見て自分の動きを決めることになる。また、カメラは3台設置されており、1つは天井に設置され、キッチン・ダイニングを俯瞰するように、2つ目と3つ目のカメラは周辺の廊下からキッチンを映しており、その一つはクロースアップして目線の高さで映し、もう一つは腰の高さからやや引き気味に映していた。
参加者はダンスのプロ、初心者の経験を問わず、基本的に自由に体を動かすことができ、30分の間、空間と自分と他人との関係からそれぞれが自分の行う動きを考えなければならない。
講師を筆頭に始まったWSの前半は、参加者それぞれの動きや目的意識が明確ではなく、バラバラに動いていたように感じた。自分自身、自由な動きを求められる中で何を根拠に規定するべきか少々戸惑った。しかし、後半に進むにつれ、講師の先導もあって、空間の特徴やカメラの役割が把握できるようになり、どのように対処すべきかが理解出来るようになった。
ここで、先述したカメラ(から映しだされる映像)と身体との関係を整理してみたい。参加者はカメラの映像から動きを決定している。映像を見ることによって、自身の運動を客観視することや、カメラを介して空間を別の角度から見ることによって生じた分節化された空間を元に、自らの身体の配置を考える。
また、これらの装置は、別の視点から運動を規制する。つまり、この空間で身体を動かすことは、その運動を観察する他者が存在すること、そして、そこで起こっているすべての事象が別の人間によって読み取られるという可能性をも含んでいる(今回このWSがUstream配信されているという設定もまた同様に考えられるだろう)。私自身、凸凹した床の部分的な角度に体を委ねてみたり、複雑に構成されている壁に体の動きを委ねてみたりと、観察されうる対象として解読されることを前提に考えながら様々な実験を行なった。それにより、空間と参加者同士の意図との関係を探る試みが出来、よい体験になったと思う。

このWSで得た個人的な体験は、今後のフィードバックによって、より段階を経ることが出来るだろう。講師が企画した他のプログラムにおいても参加者がより主体的に関わることによって、「開く」という可能性が広がるのではないかと感じるに至った。


注1
JOU [project-144] (「三鷹天命反転住宅…つづく。」[主催:ABRF, Inc.]にて)
コンテンポラリーダンサーのJOUが、三鷹天命反転住宅に2011年5月16日-22日の1週間滞在し、様々なパフォーマンスやワークショップを開催。計144時間の滞在期間中の様子はUstream配信された。
● 開催情報
http://www.architectural-body.com/mitaka/201105event.html
http://odorujou.blog100.fc2.com/blog-entry-1536.html
● Ustreamアーカイヴ
http://www.ustream.tv/channel/project144/videos

注2
その他特殊な要素として、化粧室やシャワールームに間仕切りがないことや、曲面に覆われた球体の部屋や凸凹の床等があり、いくつかの場所で日常生活をする上で支障を来たすのではないかと思われた。
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by bodyartslab | 2011-09-19 00:00 | Essay