Body Arts Laboratory :: Blog

site-specific dance: LMCC - Sitelines 2009

山崎広太


僕にとって毎年夏のNYの風物詩といえば、Lower Manhattan Cultural Council(ローアー・マンハッタン・カルチュラル・カウンシル)が主催するSitelinesシリーズの、外の至る所で行なわれるsite-specific danceだ。今年は、時期が例年より早まったことと、WWFesで東京にいたので、たくさん見ることはできなかった。その中で二つだけ見たので紹介したいと思う。

何よりも圧巻だったのは、Merce Cunningham Dance Companyだった。それはMerceが亡くなった5日後に行なわれた。4月のBAM(Brooklyn Academy of Music)も90歳の誕生日を記念しての公演も凄まじかったが、今回は初めてMerceのsite-specificを見ることができ、堪能した。遠く離れた二つの空間を使って、ダンサーがその二つの空間に移動しながらの作品。ダンサー達が周りの空気と呼応して、宇宙を感じた。NYにおける柳の下の宇宙ではないが、全てを受け入れることのできる神秘性と言ったらいいのか? 僕が中学生の頃読んだ、故武満徹さんの文章で、インドネシアの影絵とMerceのことを結びつけて書いていたような記憶があるのだが、その時は意味が解らなかった。それはJohn Cageのコンセプトでもあり、アメリカの誇る文化だと思った。このようなことは、誰もができないことだと。それ故、ムーブメントは絶対的にアカデミックでなければいけないことを痛感。ムーブメントが、少しでもひるんでしまったら、そこに存在することの意義はなくなってしまう。1時間以上はやっていた。小杉さんの音の意味も十分理解できたし、チャンス・オペレーションの意味も十分納得した。すっごくsite-specificに向いているMerceだと思う。次第に、西日も染めてくる時間帯も良かった。そして、最後に、二つの空間で踊っていたダンサーはぴったりと同時に終わる。その瞬間が良かった。二つの空間の関係性はでたらめのように見えるけど、しっかりのMerceの中に出来上がっていて、まさしく抽象という名にふさわしい雄々しさを感じた。ダンサーはタスクを堂々と遂行していた。ほんとうに良かった! またMerceのsite-specificを見たいと強く思った。今年『NY Times』に、2年後にカンパニーは解散すると、彼が生きているうちに遺言を宣言して話題になった。このカンパニーがなくならないように願うけど、とてもカッコいいMerceだ。そしてJohn Cageとの久々の再会を楽しんでいると想像する。

実はその数日前に、Nicholas Leichterのsite-specificを見に行ったのだが、始まって急に雨が降って来たので中止になってしまった。根性ないな~と思いながら、雨の中、何故ダンサー達はカニングハム・テクニックでウォーミングしているのだろうと不可解に思っていたら、帰って来て、ビエナのインパルスタンツに参加している未奈からのメールでMerceの死を知って唖然とし、そうだったのかと納得した。その後、ニュースを見て再確認し、翌日『NY Times』に4ページにも渡って記事が載った。アーティスト同士は、情報交換が早いのと、こっちのダンサーの誰もがMerceをリスペクトしていると思った。

そして今回の最後のプログラム、Gabrielle Lansnerの作品。有名なデザイナーCaterina Bertolottoの衣装で、ダンサーは女性のみ。複合的に空間を使い、交わったり離れたりと、音楽はリリカルな音で、女性特有に醸し出される美しい全体性と、流れるようなムーブメントが、野外における昼間の日常の中の幻想性に誘う。ダンスはもとより、遠くに船の通りすぎる時間、波のせせらぎの音、NJの連立するビル、湾曲する空間、叙情的な音、じっと見つめるお客さん達……あらゆる時間を同時に感じることができ、そして、そこに自分が見る場所を選ぶことによって、自分はじめ、それぞれがお互い存在していることを感じ、尚かつ見慣れた風景を改めて認識すること。それは、site-specificの醍醐味でもある。このようにアートが市民社会に浸透することが、日本においてできればと思うが、先は遠いのかな? 努力したいと思う。

b0165296_1553734.jpg
b0165296_15532088.jpg
b0165296_15533288.jpg
b0165296_15534585.jpg
b0165296_15535756.jpg

[PR]
by bodyartslab | 2009-08-19 00:00 | Essay